受託者は、信託の目的の達成のため、自らの裁量によって信託事務を行うことができます。

例えば、以下のような行為も受託者の権限に属します。

  • 不動産の補修、売却、取り壊し、交換、共有物分割、担保設定
  • 訴訟提起

しかし、信託行為の定めにより、受託者の権限に制限を加えることは可能です。

 

もし受託者の権限に制限を加えたい場合、

「不動産売却等の処分行為を、受託者は一切行うことはできない」

「受託者が担保設定を行うには、受益者の承諾を要する」

等の定めを置くことになります。(信託法第26条)

信託は、受託者の利益のためではなく、受益者の利益を図るために行われます。

そのため、受託者が信託財産からの利益(受益権)を受けることは、原則認められません。

 

しかし、受託者が受益者としての立場にあれば、信託財産から利益を受けることができます。(信託法第8条)

もし受託者が受益権の全てを保有する状態が一年間継続すると、信託の終了事由となります。(信託法第163条第2号)

信託財産の所有者は受託者ですが、信託財産の実質的な権利者は受益者です。

受託者は、委託者と受益者の信任を受けて、信託財産を管理しています。

 

そのため、受託者は自分の財産を管理するとき以上に注意して、信託財産を管理しなければなりません。

その他、受託者には以下のような義務があります。(信託法第29~39条)

  • 忠実義務
  • 分別管理義務
  • 帳簿作成の義務
  • 報告義務

受託者になることができないのは、以下の者です。(信託法第7条)

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人

もし信託がされた後、受託者が成年被後見人や被保佐人になった場合、受託者の任務は終了し、原則、新たな受託者が選任されることになります。(信託法第56条第1項第2号)

業として信託の引き受けをする場合、信託業法所定の免許又は登録が必要となるため、司法書士や弁護士が受託者になることはできません。(信託業法第3条、第7条第1項)

「信託財産」とは、信託により受託者が管理又は処分すべき一切の財産のことです。(信託法第2条第3項)

なお、信託財産のうち、不動産や金銭などの個別の財産は、「信託財産に属する財産」と呼ばれます。

動産や債権などは、特にそれらの財産が信託財産である旨の公示は必要ありません。

しかし、不動産の所有権、著作権、特許権等、登記や登録が権利の対抗要件となっている財産については、信託の登記・登録をすることで第三者に対抗することができます。(信託法第14条)

なお、株券不発行会社の株式は、株式名簿に記載又は記録することが対抗要件となっています。(会社法第154条の2第1項)

信託の効力が発生した時点で、信託財産の所有権は委託者から受託者に移ります。

自己信託では所有権は移りませんが、信託財産に属するものとして権利の性質が変更されます。(信託法第2条第3項)

委託者・・・財産を提供し、信託をする者。

受託者・・・信託行為の定めに従い、委託者から託された財産の管理・処分等をする者。

受益者・・・信託から生じる利益を受ける者。

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信託契約の当事者となるのは、委託者と受託者です。

受益者は契約の当事者になりません。

目的を定めず信託することはできません。

理由は、受託者による信託財産の管理は、信託行為に定められた一定の目的に従う必要があるためです。

目的のない信託行為は無効となります。

信託は、大きく分けて「契約」「遺言信託」「自己信託」の3種類があります。

契約による信託

契約による信託は、委託者と受託者との間で、信託契約を結びます。

なお、受益者は契約の当事者にはなりません。

遺言信託

遺言信託は、委託者が受託者に対し、「信託目的に従った信託財産の管理又は処分などをすべき」旨の遺言をして行う方法です。(信託法第3条第2号)

遺言信託は、委託者が死亡することによって効力が発生します。(信託法第4条第2項)

自己信託

自己信託は、委託者が自らを受託者として信託する方法です。

自己信託は、公正証書などの厳格な方法によって行わなければなりません。(信託法第4条第3項)

信託とは、信託契約や遺言、公正証書などによって、委託者が受託者に対し自己の財産を預けるものです。

信託された財産は、信託目的に従い、受託者が受益者のために管理・処分を行います。(信託法第2条第1項)

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